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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム アートから都市に活力と創造性を

社会研究部 研究理事 吉本 光宏
執筆者 社会研究部
研究理事 吉本 光宏
パブリックアート

都市づくりにアートを活用する最もポピュラーな方法は、公共空間に彫刻等を設置するパブリックアートです。そう聞くと、駅前広場などのモニュメントをイメージされる方が多いかもしれませんが、国際的な現代美術家の作品が設置されるケースも増えています。
日本でその先駆けとなったのは、1994年に完成したファーレ立川でした。旧住宅・都市整備公団(現・独立行政法人都市再生機構[UR])の再開発と一体的に進められたこの事業では、36ヵ国92人のアーティストの作品、109点が設置されました。新宿アイランドタワー(1995年竣工)、東京国際フォーラム(1997年開館)でも、同様の事業が実施され、以来、日本のパブリックアートでは、世界の第一線で活躍するアーティストの作品が設置されるようになってきました。
建築設計と並行して、どこにどんな作品を置くか、アート計画が作成され、アーティストに提案を求めるケースも少なくありません。壁や床と一体になった作品、建物の一部が美術作品になっているようなものもあります。米国では不動産価値を高めるため、オフィスビルなどでも数多くの例が見られます。

東京国際フォーラムに設置された
Richard LONG 《Hemisphere Circle》 1997
©Sadamu SAITO
文化オリンピアード

都市空間を活用したアートイベントも、街に活力をもたらす重要な要素です。その意味で期待したいのが、2年後に迫った東京オリンピックです。一般にはあまり知られていませんが、実はオリンピックはスポーツだけではなく文化の祭典でもあります。オリンピック憲章には「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求する」と明記され、1912年のストックホルム大会から100年以上もの間、文化プログラムが実施されてきました。
その歴史を変えたと言われるのが2012年のロンドン大会で、2008年の北京大会の終了直後から4年間にわたって文化オリンピアードが開催されました。小さな市町村を含め、英国全土の1,000ヶ所以上で、約12万件の文化イベントが実施され、4,000万人以上が参加したそうです。
2012年には、その集大成としてフェスティバルが開催されました。「Once in a lifetime」というスローガンが掲げられ、まさに一生に一度しか体験できないような斬新で、大規模なアートイベントが繰り広げられました。最大の特徴は、都市空間を活用した壮大なプロジェクトが多数実施されたことです。
中でも話題となったのが、17ヶ国から240名以上のサーカス・アーティストを招き、市内随一の繁華街ピカデリー・サーカスで実施されたピカデリー・サーカス・サーカスでした。そのため、ロンドン市は一帯の道路を通行止めにしましたが、それは1945年の戦勝パレード以来のことで、まさしく一生に一度きりのイベントとなりました。
フィナーレでは空中から1.5トンの羽毛が振りまかれ、25万人が来場しました。この破天荒なイベントを実現するため、ロンドン市はあらゆる部局が協力し、羽毛のひとひらまで清掃できる完璧なプランを練り上げました。その結果、行政組織の中に新しいことにチャレンジする姿勢が生まれた、と言われています。
他にも、巨大観覧車ロンドン・アイのスポークでダンサーが踊る「One Extraordinary Day」、ショッピングセンターのショーウィンドを使った写真展「The World in London(写真)」、市内の彫像21体に新進デザイナーなどによる帽子を被せた「Hat walk」等々、数々のユニークな事業が行われました。

著者撮影(撮影日:2012年7月)

これからの都市に活力をもたらすためには、芸術などの創造性が必要だと説き、それを創造都市と名付けたのは、英国の都市プランナー、チャールズ・ランドリーでした。アートに代表されるような未知のものを受け入れ、生み出す都市には、デザインやファッション、ITなど21世紀経済を牽引する創造産業が集積する、というのです。
オリンピック期間中に規制やルールを乗り越え、実験的なイベントを成功させることで、ロンドンはまさしく創造都市であることを証明しました。
2020年の東京大会でも、渋谷スクランブル交差点や銀座大通り、表参道や外苑一帯などで様々なアート・プロジェクトが検討されています。是非それらを成功させて、オリンピック・パラリンピックという世界中が注目するチャンスに、創造性に満ちあふれる都市「東京」をアピールしたいものです。

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