Jリート(不動産投資信託)に投資する魅力の1つに、「高い配当利回り」を挙げることができます。現在、日本銀行による金融緩和政策のもと10年国債利回りが0%近辺で推移するなか、Jリートの平均配当利回りは4%を超えています(図表1)。また、国内株式の配当利回り(1.9%)と比較しても高い水準にあり、仮にJリートに100万円を投資した場合、年間の配当額(税引き前)は4.1万円で株式の倍以上の金額を受け取ることができます。
それでは、何故Jリートは高い配当利回りを実現できるのでしょうか。以下では、野村不動産マスターファンド投資法人(以下、NMF)とそのスポンサー企業である野村不動産ホールディングス(以下、野村不動産)の利益配分を比較し、その理由を確認したいと思います。
NMFは総資産額が1兆円を超える国内最大級のJリートです。野村不動産が開発したオフィスビル(PMO)や物流施設(Landport)、商業施設(GEMS)、賃貸マンション(PROUDFLAT)を中心に、271棟の不動産を保有しています(2月末時点)。
図表2は、野村不動産とNMFがそれぞれ1年間に稼いだ利益をどのように配分しているか表わしています。 まず、野村不動産の利益配分は、法人税「31%」、配当金「20%」、内部留保「49%」となっています。通常、不動産開発事業は大きな利益が期待できる半面、多額の先行資金を要し事業リスクも高くなります。そのため、野村不動産は株主への配当金(133億円)を抑えて内部留保(334億円)を厚くし、不動産開発に充当することで成長と安定の両立を図っています。 これに対して、NMFの利益配分は、法人税「0%」、配当金「106%」、内部留保「▲6%」となっています。Jリートは利益の90%以上を配当することで法人税の支払いが免除されます。NMFは配当金(254億円)が利益(239億円)を上回っており法人税がゼロです。内部留保はマイナスですが賃貸事業の生み出す不動産キャッシュフローは安定しており資金繰りなどにおいて問題ないと言えます。
この結果、図表3で示す通り、投資利益率(税引前利益÷時価総額)は野村不動産(13.8%)がNMF(3.7%)を大きく上回っています。しかし、「法人税免除」と「高い配当還元率」によって配当利回りは逆転し、NMF(4.0%)が野村不動産(2.7%)を上回ることになります。
最後に、皆様は「利益率の高い株式か、配当利回りの高いJリ-トか」どちらに投資したいと思われましたか。Jリートの商品特性を理解するうえでこのコラムが参考になれば幸いです。