再開発で変貌する東京~賑わいとワークスペースが共存する渋谷エリア~

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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム 再開発で変貌する東京
~賑わいとワークスペースが共存する渋谷エリア~

金融研究部 不動産運用調査室長 加藤 えり子

東京は、海外の主要都市と比べても大規模であることは周知のとおりでしょう。巨大都市東京の特徴は、複数の商業・業務集積エリアを含み、それぞれが都市を構成する活力を持っていることです。そして各エリアでは、近年再開発が活発化し、新しい東京を形作りつつあります。

図表1は、東京都内の主な再開発のうち、大規模オフィス開発を含むものです。代表的なオフィス開発エリアは丸の内、大手町です。とくに昭和の時代には中層だった丸の内オフィスビル群の高層ビルへの建替えはオフィス床を大きく増やし、徐々に景色を変えてきています。また、虎ノ門も築古の中小ビルの集積地というイメージがありましたが、既に竣工した虎ノ門ヒルズに続き再開発計画が進行中で、街が生まれ変わりつつあります。

各エリアの中でも、今後大きく変貌を遂げそうなのが渋谷です。渋谷は従来、若年層の集まる商業エリアの位置づけでしたが、2000年以降、マークシティ、セルリアンタワーが竣工し、Aクラスオフィスビルも供給されると、働く場所としての存在感も徐々に増すようになりました。また、それらの開発に含まれる商業スペースは、より広範な年代の顧客層をターゲットとしたものでした。

オフィス・テナントとしては、卸・小売、情報通信などの業種が多くを占めますが、新興企業を含めた小規模なオフィスも多く、多様な業種が集積しています。リーマンショックを経て竣工したヒカリエには、大手IT企業が入居したことが話題になり、IT企業が好んでオフィスを置くエリアというイメージも定着してきています。

渋谷区はオフィスエリアとしては、都心5区に含まれますが、その中では市場規模が小さいのが特徴です。総貸床面積のシェアでは、千代田区29%、港区31%、中央区19%、新宿区13%であるのに対して、渋谷区は8%です(図表2)。そうした市場規模が小さいエリアでは、テナントが入退去した時の影響が空室率や賃料にあたえる影響が相対的に大きくなるため、平均募集賃料の変動がやや大きくなっています(図表3)。

変動は大きいながらも、14年以降、渋谷区のオフィス需要は堅調です。東京都心5区の平均募集賃料は、2013年に底打ちし、2014年以降は回復基調となっていますが、渋谷区の14年、15年の賃料回復は突出しています。これは、オフィス市場回復期に市場規模が小さく需給が逼迫したことも要因と考えられますが、渋谷区ではオフィス床需要の牽引役となっている情報・通信の業務集積がさらに進展してきていることも影響しています。

商業地としての渋谷が成り立ってきた主要因は、渋谷駅の乗降客数の多さにあります。都内屈指のターミナル駅である渋谷は、新宿とならんで、360万人規模の乗降客数を擁します。そしてかつては若年層向けに、現在はより幅広い世代向けに新しいトレンドの発信地としての役割も担っており、近年急増している外国人観光客にもそうしたエリアとして認知され、外国人も多く訪れる街となっています。

2017年の渋谷キャストに始まり、今後2027年頃まで、渋谷では複数の大規模再開発プロジェクトが竣工予定で、オフィス空間とともに、商業、イベントスペースなど多様な都市機能が拡充されます。賑わいとワークスペースが共存する渋谷ならではの都市づくりは、そこで働く就労者の創造性も高める効果があるのではないでしょうか。

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