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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム 所有者不明土地の解消に向けて
土地政策の再構築、今後の展開は?

総合政策研究部
研究員・経済研究部兼任
鈴木 智也

1――急ピッチで進む対策

所有者不明土地の問題は、震災復興における用地取得の行き詰まりで、世の中に広く認知されるようになった社会問題だ。東日本大震災では、高台移転事業の区域で土地取得が難航したとされる 。ほかにも、土地利用の停滞、課税漏れ、景観上の阻害、獣害の発生、治安悪化、不法投棄や火災など、派生的な悪影響を地域に与えている。
所有者不明土地の増加の背景には、人口減少や少子高齢化、東京一極集中などの社会情勢の変化がある。国内の人口が減り、少子高齢化が進展すると、土地の利活用ニーズは縮小する。また、只でさえ少ない若者が都市部へと流出すれば、地域経済の地盤沈下が進んでしまう。そのような状況のもとで相続が発生すれば、都市に暮らす相続人が地方にある土地を管理する状況が生まれやすく、距離の制約から細やかな土地管理をすることが難しい。相続で取得した土地の資産価値が低ければ、権利を主張するために登記するとの意識も生まれにくいだろう。現行の制度や法律は、バブル期以前の時代背景の中で制定されたものが多いため、土地の利活用ニーズが低下して未利用のまま土地が放置され、地価が下落していくような事態は想定していなかった。制度や法律が時代に即さないものになっていることもこの問題を大きくした要因の1つだと言えるだろう。
政府はこのような現状を改めるため、国土交通省と法務省のもとに「国土審議会土地政策分科会特別部会」「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」を立ち上げ、土地所有に関する基本制度の見直しや登記制度・土地所有権の在り方などに関する検討を2017年から進めてきた。そして今般、2019年2月に見直しの具体的な方向性をまとめた最終報告を公表し、制度改正に向けた検討を本格化させている。

2――制度改正に向けた進捗

所有者不明土地の対策は、2018年1月に設置された「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」のもとで進められ、国会では既に2つの関連法率が成立している。
そのうちの1つは、2019年6月1日より全面施行された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下、特措法)」である。特措法では、公益性の高い事業について、土地収容手続きの一部が合理化され、最大10年間の利用権を設定できるようになった。また、権利者が訪れることを待つ受身の登記手続きの見直しも行われ、長期間相続登記が行われていない土地については登記官が所有者を探索し、その結果を登記簿に記載して、法定相続人等に直接登記手続きを促すこともできるようになった。対策の第一弾は、公益分野の利用と所有者を比較的容易に特定できる部分に優先的に手を打ったものだと言える。
もう1つの法律は、2019年5月24日に公布された「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(以下、表題部法)」である。表題部法では、変則登記(所有者情報が不完全なもの)によって所有者が分からなくなっている場合、登記官に所有者探索の調査権限を付与し、その結果を登記に反映させることが可能となる。そして、調査しても所有者が判明しなかった場合には、裁判所が選任した管理者が土地管理を担うことになり、その後、土地の利活用も可能とする制度が創設される。対策の第二弾は、所有者の特定がより困難な部分に手を打ったものだと言える。
対策の第三弾は、新たな所有者不明土地を生まない対策が中心となる。政府は今後、2020年までに「土地基本法」や「国土調査法」などの法律を改正し、国民の権利義務を定めた「民事基本法制」の見直しにも着手する計画だ(図表)。制度改正では、相続時に土地を国に譲る制度、共有者から持分を取得する仕組みなど、個人の所有権に踏み込んだ内容も検討される。影響が及ぶ範囲も格段に広がるだけに、その中身についてはよく確認していく必要がある。

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