人口減少局面に入った日本において、外国人の存在感は一層高まっています。総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」によれば、2017年度は、日本人が前年から約40万人減少したのに対し、外国人は約20万人増加したことで、総人口は約20万人程度の減少に留まり、日本人の減少の半分を外国人の増加が補いました。
住宅の需要に大きな影響を及ぼす若年層(15歳~29歳)と中壮年層(30歳~64歳)に着目すると、2013年度を100とした時、2017年度の外国人の若年層は144、中壮年層も116となり、特に若年層が大きく増加しています(図表1)。
それでは、急増する外国人はどのような住居に暮らしているのでしょうか。総務省「国勢調査」によれば、日本人を含む「全世帯」では「持ち家」に住む世帯が61%を占め、次いで「民営の借家」に住む世帯が28%となっています(図表2)。
一方、「外国人のみの世帯」に限定すると、「民営の借家」に住む世帯が50%を占め、「持ち家」に住む世帯は17%となっています。また、「公営・都市再生機構・公社の借家」に住む世帯が10%を占め、日本人を含む「全世帯」(5%)の倍となっています。公営の住宅団地は、民間の賃貸住宅に借りる際に必要な保証人や礼金・手数料が不要であり、一定の所得基準を満たせば契約時の敷金のみで入居可能なため、外国人の入居希望者が多い模様です。そのため、一部の団地では外国人入居者の占める割合が非常に高くなっているとの指摘もあります。
外国人留学生の住まいに関して、日本学生支援機構「平成27年度私費外国人留学生生活実態調査概要」によれば、一人あたりの専有面積は、「10㎡未満」との回答が5割弱を占めました(図表3)。また、約半数の留学生が同居をしており、同居人としては他の「外国人留学生」との回答が最も多い結果となりました(図表4)。
この結果から、日本の高い家賃負担を軽減するためにルームシェアをして、2~3人で共同生活する留学生が多いことが窺えます。特に、中国人留学生の多くは中学・高校生の時に相部屋での寮生活を経験しており、ルームシェアにあまり抵抗感がない模様です。日本人の大学生(自宅外生)においては、ワンルームマンション等で一人暮らしをする学生が大半を占めているのとは対照的です。
2019年4月の入国管理法の改正に伴い、増加が見込まれる外国人労働者の住居選択は、就業時間帯や雇用期間等に大きな影響を受けているようです。例えば、「飲食サービス業」の就業者(例:飲食店のコック)は、業務が深夜まで及ぶこともあることから、通勤利便性(職場までの近さ)を重視します。雇用期間に期限のあるシステムエンジニアは、家具付きのマンスリーマンションを探すことが多いようです。
また、文化の違いも住居選択に影響を及ぼしています。製造業に多く従事している日系ブラジル人はバーベキューパーティーを開くために、複数の駐車場がある庭付きの戸建て住宅を求めることもあるようです。
人手不足の深刻化が見込まれる中、外国人留学生や労働者の受け入れ拡大は必要不可欠な状況といえます。今後、不動産ビジネスを拡大するためには、外国人を取り巻く背景や住居に対するニーズを理解し、事業戦略に織り込むことが本格的に求められるでしょう。