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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム 「住宅分野における子育て支援施策の広がりと課題」

社会研究部 准主任研究員 坊美 生子

最近、子育て世帯に配慮した広さや設計等を備えた住宅を、「子育てに適した住宅」として認定する自治体が増えている。東京都や埼玉県などが、ファミリー世帯の定住促進や子育てしやすい住環境の整備を目的に導入している。しかしいずれも、認定件数は伸び悩んでいるようだ。何がネックになっているのか、全国に先駆けて2002年度から認定制度を始めた東京都の墨田区の例から考えてみたい。

墨田区は、東京23区の中で7番目に面積が狭く、ファミリー向けの集合住宅が少ないことから、子どもができると区外へ転出してしまう世帯が多いのが頭痛の種だった。そこで2002年度、事業者に新規建設を促すため、床面積55㎡以上の住戸が全体の3分の2以上で、ベランダに転落防止措置が講じられているなど一定の条件を満たした分譲または賃貸マンションを「すみだ子育て支援マンション」として認定する制度を始めた。キッズルームや屋外の遊び場を整備した場合や、保育施設への送迎サービス等を行っている場合も評価対象とし、補助金も用意した。約10年間で11件が認定され、2013年度からは「すみだ良質な集合住宅認定制度(子育て型)」に引き継がれた。新制度では新たに2件が認定されている。

件数が物語るように、墨田区でも事業者による制度の利用は低調だ。墨田区はその理由を「そもそも区内で建設用地が不足している状況が変わっていない」と説明している。それだけでなく、例えばキッズルームや遊び場を作ったとしても、分譲から10年経てば入居世帯の子供達が大きくなって利用の減少が想定されることや、送迎サービス等の維持にはコストがかかることがネックになっているという。また、管理組合が認定後の管理業務を行うことになるため、区へ報告書作成等を行うのが手間になる点も、敬遠される理由だという。

親は子育てに関して「安全」「安心」「便利」を望んでいる。自治体から「子どもの事故が起きにくい設計」「子どもが遊べるスペースがある」とお墨付きがある住宅なら、関心を持つ親は多いだろう。しかしポイントは、住宅はハコモノであっても、そこで子育て支援を行うにはハード、ソフトの両面の取り組みが必要だということだ。住戸面積などハード面の条件をクリアしても、「入居者の年代構成が変わったらどう活用するか」という運用の難しさが生じ、サービス維持のための費用負担をどうするかなど、ソフト面の問題も大きい。事業者はこれらへの対処方法をあらかじめ考えておかなければ、着工時に認定を受けても、その後のサービスを継続することができない。今後、認定住宅が増加し、子育てしやすい住環境が普及していくためには、各自治体も制度設計を工夫する必要がある。少子化が進み、子育て支援の重要性は社会的に認知されたが、住宅分野における取り組みは、まだまだ試行錯誤の段階と言えるだろう。

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