女性の社会進出が進むとともに、近年の政策効果もあり、共働き世帯が増えている。「M字カーブ」は解消しつつあり、現在、子育て世帯では共働きが約6割を占めて、専業主婦世帯の2倍近くになっている(※1)。
共働き世帯と専業主婦世帯では収入もさることながら、消費生活にも違いがある。夫婦と子ども2人の核家族世帯について、共働き世帯と専業主婦世帯の違いを見ていきたい。
2000年以降、共働き世帯でも専業主婦世帯でも可処分所得が減る中で、消費抑制意識が強まっている。消費内訳は、通信費や教育費、食料費などの「必需的消費」の割合が増え、被服費や娯楽費、交際費などの「選択的消費」が減っている。就職氷河期世代も多い今の子育て世帯では、収入が伸びにくくなっていることに加えて、将来の社会保障不安もある。できるだけ消費を減らし、貯蓄として手元にとどめておきたいという意識は高まっている。
一方で共働き世帯が増えることで活性化している消費もある。共働き世帯の食費は専業主婦世帯とおおむね同額だが、内訳を見ると、調理食品や外食、家事代行サービスの利用が多いといった特徴がある。また、この傾向は妻がフルタイムで働く世帯ほど顕著である。共働き世帯が増えて、利便性重視志向が高まり、時間短縮ニーズや代行ニーズが強まる中で、スーパーではカット野菜や料理キット、無洗米など調理の手間を省く商品のバリエーションが増えている。また、フードカッターや材料を入れてスイッチを押すだけで煮込み料理ができるスロークッカーなどの人気も高まっているようだ。食洗機や洗濯乾燥機、ロボット掃除機などの時短家電は、もはや共働き世帯の必須アイテムと言えるだろう。
時間のない共働きが増える中で、複数のことを平行してできる「ながら」サービスも増えている。例えば、大型の洗濯機が並ぶ一角に、カフェやペットを洗って乾かす設備が併設したコインランドリーが登場している。平日にシーツなどの大物を洗濯することが難しい共働き世帯が、週末にまとめ洗いをしながら、その横でほっと一息をつくといった利用が想定されているのだろう。
共働き世帯では子ども一人当たりの教育費が多いことも特徴的だ。共働きの場合、平日に子どもの習いごとの送迎をすることが難しい。今、都市部を中心に、習いごと教室が併設した学童保育クラブが増えている。例えば、学習塾やネイティブによる英会話、ピアノ教室などが併設し、月10万円を超えるところもある。また、子供の習い事送迎タクシーも登場し、1回5千円を超えるものもあるようだ。いずれも高額だが予約を受けきれないほどとも聞く。
さらに、共働き世帯では、自動車保有台数やスマートフォンの保有台数が多いため、自動車関係費や通信費が多いことも特徴的だ。自動車は地方部の通勤手段として、スマートフォンは在宅率が低いために子どもを含めて一人に一台ずつ必要ということなのだろう。
今後ますます共働き世帯が増えることで、時短ニーズや代行ニーズを叶えるモノやサービス、そして、子どもの教育関連サービスはさらに活性化する可能性が高い。しかし、クルマに関してはそう単純な話ではないだろう。カーシェアやライドシェアの登場により消費者全体でクルマとのつき合い方が変わっている。
また、消費拡大を考えた場合、子育て世帯では、全体としては消費抑制意識が強いことが大きな課題だ。現役世代の雇用の安定化と可処分所得の引き上げを進めるとともに、社会保障制度の世代間格差の是正と持続性確保を進めることで、経済不安を和らげる必要がある。
※1:厚生労働省「国民生活基礎調査」における18歳未満の子のいる世帯