ディープラーニングが進める不動産のIoT化

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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム ディープラーニングが進める
不動産のIoT化

金融研究部
准主任研究員
佐久間 誠

米グーグルに買収されたディープマインド社が開発した囲碁AI「Alpha Go(アルファ碁)」が2016年3月にトップ囲碁棋士を破り、世界に衝撃を与えた。囲碁でAIが人類に勝利するのは10年先とも言われていたが、人間の脳をまねた「ディープラーニング」という技術を取り入れることで、AIは飛躍的に進化した。ディープラーニングは、東京大学の松尾准教授が「50年来のブレイクスルー」と表現するなど、現在のAIブームを牽引する技術である。

ディープラーニング以前のAIは人間がいろいろ教え込む必要があったため、人間が言語化しやすい分野には強かったものの、言語化しにくい分野には弱かった。一方、ディープラーニングは、人から細かい指示を受けなくても、膨大なデータをもとに、自分で能力を高めていく。そのため、言語化することが難しい「見る」や「聞く」などのことを自らできるようになった。世界的な画像認識コンペのILSVRCでは、2012年にディープラーニングを採用したチームが圧勝した。その後、ディープラーニングの進歩により精度はさらに向上し、今ではAIの画像認識能力は人間を大きく上回る水準となった。

ディープラーニングの実用化が進めば、不動産業でのIT活用が、一気に進む可能性がある。そもそも不動産業でIT化が遅れていた理由として、不動産はアナログ情報が多いため、デジタル化することが難しかったことが挙げられる。しかし、ディープラーニングを使えば、そういった情報をデジタル化し、不動産のIoT化(Internet of Things、モノのインターネット)を進めることができる。アマゾンが米国で運営するスーパー「Amazon Go」では、顧客は入店ゲートにスマホをかざし、商品を取って店から出るだけで、決済が完了し、商品を購入することができる。このようにレジの無い店舗が可能になったのは、ディープラーニングによる画像認識などで、商品を識別するためだ。同様の技術は、商業施設だけでなく、オフィスや住宅など不動産全般で活用できる。例えばオフィスでは、空間がどのように使われているかモニタリングすることが可能になり、データをもとにレイアウトを変更するなど、オフィスの使い方を最適化することが可能になる。

10年~20年後に日本の労働人口の半分がAI等により代替可能になるといった研究が大きく報じられるなど、AIは人類の脅威として語られることが多い。しかし、現在研究が進んでいる分野は、人間の機能の一部を機械ができるようにするものが中心である。ディープラーニングの進歩により、不動産でのAIの活用領域は確実に広がるが、いかに使いこなすかという視点がより重要になる。

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