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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム Jリート市場の動向
~2017年の振り返りと今年の注目ポイント~

金融研究部 主任研究員 岩佐浩人
執筆者 金融研究部
主任研究員 岩佐浩人

まず、昨年のJリート(不動産投資信託)市場を振り返りますと、好調な不動産ファンダメンタルズが継続する一方で投信の解約売りに伴い需給が悪化し2年ぶりに反落しました。好業績を背景に最高値を更新する株式市場と比較した場合、Jリート市場の低迷が際立つ1年だったと言えます(図表1)。

図表1:東証REIT指数とTOPIX(16年12末=100、12/22時点)

なお、投信の解約売りが増加した理由は、金融庁が「毎月分配型投信は顧客本位でない」と指摘したことによります。この報道をきっかけに、金融機関が毎月分配型を中心にJリート投信の販売を手控える姿勢が強まりました。これによりJリート投信からの資金流出額は4月から11月にかけて2,000億円を超えています(図表2)。過去5年間で約2.4兆円の資金流入があり最大の買い手であったJリート投信が売りに転じたインパクトは大きく、今なお需給不安の解消に時間を要しています。

図表2:Jリート投信(ETFを除く)の資金流失入額(2012年~2017.11月)

一方で新しい動きとして、Jリート市場では初めて自己投資口の取得(自社株買いに相当)が行われました。リートによる自社株買いは2013年の制度改正で解禁されましたが、これまで活用事例はありませんでした。一般に、自社株買いは(1)利益還元の拡充、(2)株価の上昇、(3)資本効率の改善、(4)買収リスクの低減を目的としています。現在のJリート市場は不動産価格の上昇で純資産価値が上昇する反面、株価が軟調なため上場59社のうち半数以上の銘柄がNAV倍率で1倍を下回っています。昨年は4社が自社株買いを発表し株価も堅調です。市場では割安な株価を是正するための手段の1つとして自社株買いへの期待が高まっています。
続いて、今年の注目ポイントとして「3点」取り上げたいと思います。
1つ目は国内の景気動向です。2012年12月にスタートした「アベノミクス景気」は今年いっぱい持続した場合、「戦後最長の73カ月」に並びます。ニッセイ基礎研究所は、輸出や企業の設備投資の伸びが高まり18年度実質GDP成長率を1.2%と予想していますが、来年に予定される消費税率引き上げや元号変更を前に景気拡大の持続性が注目されます。
2つ目は日本と米国の金融政策です。現在の中央銀行トップが任期を迎えるなか、米国は追加利上げ、日本は緩和維持が基本路線です。しかし、米国で年3回の追加利上げが実施されると短期金利は2.25%へ上昇します。為替の動きや世界の資金フローの変化に注意が必要でしょう。
3つ目は、東京オフィス市場の動向です。今年から2020年にかけて東京ではオフィスの大量供給局面を迎えます(図表3)。今年竣工する大型ビルはリーシングが順調で内定率も高まっています。日経不動産マーケット情報によると、今後1年間に竣工する大規模ビルの内定率は平均66%で前回調査より25%アップしました。さらに、来年竣工予定のビルでも渋谷エリアを中心にIT企業の大型テナント内定が伝えられています。しかし、市場全体では2次空室の発生に伴い稼働率が低下したり賃料が頭打ちしたりする可能性もありそうです。

今年のJリート市場は引き続き需給問題の払拭が課題となります。しかし、バリュエーション面で割安感が強いことに加えて自社株買いや潤沢な物件含み益の活用した利益還元などプラス材料も多く、下値は限定的だと思われます。

図表3:2018年竣工予定の大型ビル(東京23区、延床面積1万mm以上)

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