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ニッセイ基礎研究所×野村不動産オリジナルコラム

日本人女性の労働力率上昇に向けた課題
~出産・子育てによる離職の現状と今後の方向性~

執筆者

生活研究部 主任研究員

久我 尚子

政策効果もあり広く知られるようになりましたが、日本では女性の年齢と労働力率(ⅰ)の関係をグラフ化すると、30代でへこみのできる「M字カーブ」を描きます。これは、出産・子育てで一旦退職し、子育てが落ち着いてから再就職する女性が多いためです。

一方で女性の社会進出が進むスウェーデンやドイツ、イギリス、アメリカではM字は描きません(ⅱ)。出産・育児期でもへこみはなく、台形あるいは逆U字カーブを描きます。この要因には、仕事と子育ての両立支援策等の女性の就労環境が整備されていることや、一般的にフルタイム労働とパートタイム労働の転換が可能であることなどが指摘されています(ⅲ)。

しかし、遅ればせながら、日本でも女性の就労環境の整備が進み、M字は徐々に解消に向かっています。M字の底である30~34歳の女性の労働力率は、2000年から2016年にかけて、57.1%から73.2%へと上昇しています。さらなるM字の底上げを図るためには、出産後の就業継続率が雇用形態によって大きく異なる現状を変える必要があります。

現在、正規職員の女性では育児休業制度の利用も増え、出産後も7割が働き続けるようになっています(図)。しかし、育休利用の少ないパート・派遣では就業継続率は伸びず、出産後は四分の三が退職します。長らく続く景気低迷により、若い女性ほど、パート・派遣などの非正規雇用者が増えています。総務省「労働力調査」によると、25~34歳女性の非正規雇用者率は、2000年では27.0%でしたが、2016年には39.5%まで上昇しています(ⅳ)。

非正規雇用者で育休利用が進まない原因は、非正規雇用者でも育休を利用できることが知られていないこと(認知度は約2割(ⅴ))に加えて、取得要件を満たすのが難しいことがあります。取得要件は、①「同一事業主に1年以上雇用」、②「子が1歳以降も雇用の見込み」、③「子が2歳になるまでに契約満了しない」ことです。②や③のような育休後の雇用を確約することは、人繰りの厳しい中小・零細企業などでは難しい状況もあるでしょう。

しかし、今年1月、非正規雇用者の育休取得要件が緩和され、②や③の代わりに「子が1歳6ヶ月になるまでに労働契約満了が明らかでない」こととなりました。また、3月には「働き方改革実行計画」でも、賃金だけでなく各種手当や福利厚生にまで広げて、非正規雇用者の処遇改善の方向性が打ち出されました。これらの取り組みによって、今後、非正規雇用者の状況は一定の改善が期待できるでしょう。

一方、環境が整っているはずの正規雇用者でも、現在、3割が出産退職していることも課題です。この背景には、日本では依然として夫婦の家事・育児分担が妻に偏っていること、そして、都市部における保育園待機児童問題があげられます。しかし、これらについても「女性の活躍促進」をはじめとした政策が進められています。現在は過渡期であり、今後は少しずつ改善に向かうのではないでしょうか。

女性の就労環境の整備に向けて、多方面からの施策が進むことで、日本人女性の労働力率カーブに見られるM字のへこみが消え、欧米諸国のような台形カーブとなることを期待したいものです。

図:雇用形態別にみた第1子出産後の就業継続率、及び育児休業取得率の推移

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